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人気(ひとけ)のない屋外で、しかも夜というシ チュエーションだからなのか、緊張でドキドキ と鼓動が加速する。
瞼を閉じる私の顔に、微かにかかる息とそっと 触れた唇の感触。
静かに顔を離したムトが、
「アイラ、好きだよ」
そっと耳元で囁き角度を変えて、再び落とされ た口づけは深く激しく、それでいて優しくて甘 い。
森林に響き渡る2人の吐息は、風に乗ってどこ かへ運ばれる。
終了した花火と共に、賑やかさが徐々に消え去 るふもとの街は、静かな夜景となって映る。
コツンと互いの額を合わせて見つめ合う至近距 離に、次第に高ぶる2人の気持ち。
「部屋に、行こう」
「………」
私は無言で頷いて、肩を抱かれたまま坂道を降 りた。
降りた先の道沿いにムトの車がとめてある。
時折吹く緩やかな風が、涼しさと共に微かな花 の香りを運んできた。
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