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わたあめのような真っ白い雲が、綺麗なブルー の空に浮かんでいる。
まだまだ夏の暑さが残る9月初旬。
私とムトはオープンしたばかりの屋内プールに 足を運ぶ。
一定の水温を保ち1年中泳げる温水プールは、 子供から大人まで楽しめるから予想以上の混み ようで。
「うっわ、マジか。最悪」
オープン記念、入館料半額とあって長蛇の列を 作る館内入口。
それを見たムトが落胆の言葉を吐き捨てる。
「凄い人だね。今月いっぱい半額だから仕方な いか。はぁ……」
最後尾はどこだろうと探しながら、自然に漏れ た溜息に、
「今日はやめとこう。これじゃあ、いつ中に入 れるかわかんないし、入ってもこの人だ。水の 中で身動き取れないだろうし……」
ムトは日を改めようと提案する。
「そうだね。みんなオープンを心待ちしてたか ら、少し落ち着いてからまた来た方がいいかも ね。残念だけど……」
「そんな顔すんなって。それよりどうしよう か。映画でも行く?」
ガックリ肩を落とす私を宥めるように、ムトは 優しく微笑んで腰を引き寄せた。
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