夢の始まり

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夢の始まり

―――ここ……は?……。 目の前に映るのは真っ白い天井に細長い蛍光 灯。 そして……。 私を覗き込む複数の顔。 ―――パパ、ママ、お兄ちゃん。私が寝ている のは……ベット? 間違いない。ここは病院だ。 ―――そうだ。あの時トラックに跳ねられて重 体……、いや死んだんじゃ……。 「亜衣羅、わかるか?パパだぞ?」 元々細い目を更に細めた父が見つめている。 「亜衣羅どこも痛くない?」 母の目から涙が零れた。 「良かった。気がついて……。ほんと良かった」 安心した兄が母の肩に手を置いた。 「パパ、ママ、お兄ちゃん」 1人1人の名前を口にした私は、首を傾げて起 き上がる。 あの時、確かに跳ねられたのに……。 全身に激しい痛みもあったし、傷口から流れた 血がアスファルトを赤黒く染めていったの に……。 ―――それなのになんで……。 頬と肘にガーゼで手当されてはいるけどピンピ ンしている。 ―――じゃあ、あれはいったい……。私、夢で も見てた? 困惑する私の耳に、兄の声が飛び込んできた。
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