9人が本棚に入れています
本棚に追加
「ちょっと亜衣羅。どうしたの、その怪我」
大学に着き席に座った私の元に、幼なじみで親 友の夏子が声をかけてきた。
この荒川夏子(あらかわなつこ)が、私と卓郎を 引き合わせてくれたんだ。
あれは私達が高3の頃。
卓郎の5歳離れたお兄さんと付き合っていたの が夏子で、親友の私を弟の卓郎に紹介したのが きっかけ。
大学を出たら夏子とお兄さんは結婚する事が決 まっていた。
今日の講義は人が少なく、空いた席が目立って いる。
一言も逃さないようノートを取るつもりだった のに、欠伸で潤んだ瞳が度々視界をぼやけさせ て……。
「さっきから何回目?」
「怪我のせいで眠れなかったのか?」
右隣りから呆れた夏子の声が聞こえて、左隣り から卓郎の心配する声が届く。
夕べ早くに寝たはずなに、突然眠気に襲われ た。
最初のコメントを投稿しよう!