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ここは、街の景色が一望できる小高い山の上。
生い茂る木の下に腰を下ろした浴衣の私は、民 家の明かりが灯る街の中心部から外れた、暗い 一角を見つめている。
「そろそろ上がる頃じゃないか?」
隣りに座る2歳年上の恋人、ムトと一緒に。
開校記念を盛大に祝う為、10年の節目毎に校 庭で花火を打ち上げる、我が母校。
東林高校。
そして今日が30周年、3回目の花火を打ち上 げる日だった。
「早く上がらないかなぁ、絶対綺麗だよね」
「10年に1度のイベントだから、結構金かけ てんだろうな」
私達は、暗い夜空一面に広がる花火を、今か今 かと待ち侘びる。
ピュ-ッ…………。
「あっ、始まったよ。ムト」
その瞬間、地震でも起きたように私の体がグラ グラと揺れた。
―――な、なに?
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