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「それとこれとは別問題でしょう!」
「まあまあ。お前は黙っていればただの良い男なんだから、黙って高みの見物に徹していろ。」
云いつつ、ユディアスは通りかかった給仕のボーイから酒の注がれたグラスを二つ受け取った。
「大佐。俺は、高みの見物が出来ないから嫌なのです。これじゃあ、思いっ切り当事者じゃないですか。」
マキュシリアはユディアスの言葉は時々矛盾していると思っている。けれど、一応こんな困った人でもマキュシリアの上司に当たる人間なので、こういった公的な場所でユディアスに対して文句を云うのはやはり失礼な気がするので、マキュシリアは精々不貞腐れた顔をして見せるのである。
「何だ、マキ。妙にカリカリしてるじゃねぇか。まあまあ、これでも飲んで気を落ち着けな。」
そう云って、ユディアスはマキュシリアにグラスを押し付けた。
酒で気が落ち着くものですか。と、マキュシリアは思うのだが、やっぱりぐっと言葉を飲み込むのである。
きん、と音を立ててマキュシリアはユディアスとグラスを合わせた。
グラスの中の淡くオレンジに色付いた液体が、波乱を予知したように大きく波打った。
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