-2163年6月12日-

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「・・・確かに僕は劣化型の能力者だけど、なんでそんな僕を誘拐したの?」 「俺の仕事を手伝って欲しい」 「仕事?」 「そう、仕事。雇い主に言われたとおりにお掃除をするんだ。危険だし、犯罪めいたこともする。仮に俺らが捕まったり死んだりしても誰にも助けて貰えないちょっとブラックな仕事だ」 「そんな仕事があるんだ」 「まあね。で、そういう仕事にぴったりなのが世間的にも価値が低い能力者、劣化型の能力者だ。」 「あなたも劣化型なの?」 「あぁ、なんだそれって位しょぼいぞ俺の力」 男は自嘲する様に笑う。 「誘拐した俺が言うのも変な話だけど、行くあても無いだろ?うちに就職しちゃいなよ」 考えるまでもなかった。というより、初めから自分に選択肢など無かった。 この男の誘いを断っても、行くあてはもちろん無いしあの研究所には戻りたくない。 だがこれはチャンスだとも少年は思った。 あの研究所から出れたのは自分の人生の中で最も幸運な事だ。恐らく、追手も簡単には来ない。この男がそれを許していないはずだ。 「分かった、協力する」 それを聞き、男は嬉しいそうに顔を緩める。 「ベストアンサーだ。じゃあまずは体を治せ。仕事はその後だ」 そう言い残して男は部屋を出ていき、少年も再び眠りにつこうとした。 まだ体にダメージが残っているのだろう、少年はすぐにウトウトし始めた。 薄れていく意識のなかでボンヤリと考える。 体が治ったら自分は危険な仕事をする。 警察に捕まるかもしれないし死ぬかもしれない。 ・・・・傷が治らないでこのままずっと眠っていたいな。
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