-2163年6月29日-

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時刻は深夜2時。 社員が全員帰った後のビルの中を警備員数十名が巡回と監視をしていた。 都内でも名高い企業のビル。保管されている情報や社員が使っているパソコンのデータ、そのどれもが企業が潰れるのに充分な破壊力を持っている。 そのため、夜から次の日の社員達の出勤までの間を警備する彼等への責任とプレッシャーは、他の企業とは比べものにならない程だった。 警備員の腰には放電機能付きの警棒とゴム製の弾丸が入った拳銃。 彼等の守備を破り、このビルから何かを持ち出せた者はこれまでで0。正に、鉄壁の守りだった。 ……その日までは。 午前3時。警備員が警備室で一人、監視カメラからの映像をチェックしていた。特に異常は無く、集中力の切れていたその警備員は先程から何度も欠伸をしていた。 ガチャッ 警備室の扉が開き、別の警備員が部屋に入ってくる。 「オイ、おせーぞ。3時から仕事だからって3時に来てんじゃねーよ」 「悪い、仮眠し過ぎた」 「たくっ、まぁいいや。ほれ、映像チェックすんぞ」 そう言い、再び監視カメラからの映像に眼を移す。そして、後から来たその男は画面を見ている警備員の首筋に警棒を当て、電流を流した。 「ギャッッアァ!?」 悲鳴をあげ気絶する。 目の前の警備員が気絶した事を確認し、持っていた警棒を収め携帯電話で仲間に連絡をとる。 「警備室落としたから。入って来ていいよー」 《はい》 「じゃ、ガンバ~」 電話を切り椅子に座る。一階の通路を何かが走り去って行ったが、椅子に座るその警備員はその事を意に止めない。 これから起きるショーの事を考え、男はニヤニヤしていた。 ―――― ビルの一階と駐車場を繋ぐ廊下を通り抜け、少年はビルの最上階を目指す。 2週間前に負った怪我はすっかり完治し、体を動かすことに支障は全くなかった。 侵入に使った扉の電子ロックは、警備員として潜り込んでいた仲間に解除して貰った。 少年に与えられた仕事は、企業が外部に漏れる事を恐れている情報、いわゆる企業秘密の強奪だった。
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