-2163年6月29日-

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数時間前------ 「あー、そういえば名前が無いんだったな・・・・じゃあ君がいた研究所から取って『近衛』って呼ぶわ」 「うん。それで、僕は今日何をすればいいの?」 「君にはある企業から機密情報を盗み出してきてもらう。これがその企業のビル内部の見取り図だ」 男は数枚の紙をホッチキスで留めた物を近衛に渡した。 「まず仲間が1人警備室に侵入して駐車場からのロックを解除する。君はそこからビルに入って最上階の社長室を目指す。社長室の金庫にヤバい情報たっぷりの紙の束があるからそれを持って帰ってくる。分かったか?」 「質問なんだけど」 「なんだ?」 「なんでそんなのが金庫の中にあるの?パソコンとかに保存してパスワードとかセキュリティでロックしてればいいのに」 「この企業、明日の午前中に取引をするんだ。金庫に入っているそれはその時に使うこの企業の武器ってことだ。パソコンとかで見せるより、紙面の方が話を進ませやすいだろ?」 納得し、手元の資料に目を移す。ビルの中は入り組んでて読み取りにくいが近衛の侵入ルートは赤線でマークされている。 「あと君の他に春も別ルートでビルに侵入する」 「春って・・あの女の子?」 「そう、だけど援護してもらおうとか考えるなよ?あいつはあいつで別の仕事で侵入するんだから」 近衛は藤永春の顔を思い出す。あの時見た彼女の表情からはこんな仕事に関わっている事など微塵も感じられなかった。 「決行は深夜3時から。変更点があれば携帯で連絡する。他に何か質問は?」 「・・・・あなたの名前は?」 「ああ、言ってなかったなそういえば。俺は東条だ。下の名前は・・・・また今度教えてやるよ」 ----------- 渡された資料通りに進行し現在ビルの6階、最上階である10階まで半分を切った。 警備員と鉢合わせることもなく、侵入から数十分で目的の場所である最上階の社長室にたどり着いた。 扉を開け、室内を確認する。当然、部屋には誰もいない。 資料通り、部屋の隅に金庫が置いてあった。ダイヤル式と4桁の暗証番号を打ち込むタイプの2つのロックがされていた。
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