-2163年6月29日-

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------- 近衛が襲撃者と対峙している頃、警備室にも予定外の訪問者が訪れていた。 警備員として潜入した柏由(カシワ ユウ)は突然部屋に入ってきたそれをマジマジと観察した。 黒のスーツに端正な顔立ち、隅々まで整えられた身だしなみからこの企業の関係者とも思える。 しかし違う。まとっている空気が明らかに会社員のそれと違う。 床には自分が気絶させた警備員が転がっているが、柏はあくまで警備員として振る舞った。 「誰だ?」 スーツ姿の侵入者は柏の問いかけに答えない。 いや、その答えを柏は聞き取れなかった。 胸に突然の激痛。見ると自分の胸板に何か刺さっている。 人の腕、そして4mは距離があったはずの侵入者が目の前にいた。 「・・・・は?」 訳が分からないまま、柏はその場に倒れた。 侵入者は柏が気絶させた警備員の胸も一突きで殺害し、携帯で仲間に連絡を取る。 「レイ、警備員は大方片づけたよ。そっちはどう?」 『ジン?なんかねぇ、さっき子供に会ったよ』 「子供?」 『うん。あと~ジンが言ってた金庫空っぽだったよ?』 「その子供が持っているのかい?」 『多分そうだと思う~。それにその子能力者で銃も持ってたよぉ』 「そう・・・・わかった、レイはその子供を追って、出来れば生け捕りして」 『多分無理だけどわかった~』 携帯をスーツにしまい、ジンと呼ばれた男は目の前の監視用モニターに視線を移す。8階に確かに子供がいる。 この子供か、そう思いながら画面を見ていると別の画面で何かが動くのが見えた。 画面を注視する。1階から誰かが入って来たようだ。布で顔を隠しているが恐らくこの子供の仲間だろう、ジンはそう判断した。 あの子供も、レイに狙われたのでは生き残る可能性はほとんど無いだろう。尋問にはこの男を使おう。 ジンは警備室を出て、男が来るであろう道に向かった。
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