-2163年6月29日-

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--------- 斬られた痛みを我慢しつつ、近衛は8階から7階への階段を駆け下りた。 途中で警備員の死体を何度も見かけた。恐らく、あの少女の仕業だろう、どの死体も首か心臓を一撃で仕留められていた。 後方を確認する。あの少女は追ってきていない。 この死体を見て分かる通り、あの少女は人殺しのプロだ。自分の能力も大まかにだがばれている。戦っても勝ち目は無い。 近衛は全力で走り続けた。最短ルートを通りたかったが、あの少女に仲間がいるかもしれないと考え、やや遠回りのルートを選んだ。 不幸中の幸いにも警備員の殆どが殺害されているため、侵入の際よりもスムーズに動けた。 5階にたどり着き、再び廊下を走ると目の前に人影が見えた。 生き残りの警備員、初め近衛はそう思った。しかし、その予想は大きく外れる。 目の前の人影はあの少女のものだった。ナイフを手に持ち、狂気的な笑みを浮かべている。 立ち止まる近衛、その距離約10m。当然少女のナイフの攻撃範囲外である。 「は~い、また会えたねぇ」 軽い口調で手を振る。 「さっきの続きだけどさぁ、君、私の欲しい物持ってるでしょ。それちょうだい?」 「・・・嫌だ」 「嫌っていうことはやっぱり持ってるんだぁ」 「・・・・・」 「まぁ無理やりにでも奪うから別に素直にくれなくてもいいんだけどね」 そう言い、少女は一歩一歩ゆっくりと近づき始める。 近衛は考える。この場における最善の策を。 恐らく、逃亡は意味が無いのだろう。先回り出来たということはこの少女は自分の居場所を知る事ことが出来るということだ。 しかし、それが彼女自身の能力によるものだとしたら、こうして対面した状態ではあまり意味を為さないはずだ。 当然、現状で有利なのは彼女だ。だが足、または臓器にダメージを与えられれば逃げられる可能性は上がる。 近衛は覚悟を決め、ポケットから銃を取り出す。それを見た少女も一気に廊下を駆け出す。 引き金を引く、が、弾丸は少女に当たらない。
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