-2163年6月12日-

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実験を潤滑に行うため、また実験に対して正しい反応を示せるためにと、小学生レベルの教養と一般常識は教えられた。 その中には、『文句や不満があれば行動で示す』というものがあった。 やがて少年はある考えに行き着く。 体に力を入れ、フラフラとしながらも立ち上がる。 よろめきながらも一歩ずつ目の前の壁へと歩を進める。 壁に辿り着いた少年は出せるだけの大声で壁の向こうへ自分の気持ちを言い表す。 「ボ、僕は、死…にたくない!も…っと、もっと……生きたい!!」 実験体の言うことなんかに耳を貸すとは思えない。それ以前に自分のこの弱りきった声が壁の向こうに届くとも考えにくい。 しかし、言いたい事は言えた。それだけで、少し気が晴れた。 暫くし、目の前の壁が機械音と共に上昇する。 願いが聞き入れられたのか、はたまた実験が再開されただけなのか。 壁が上昇をし終え、ガラス越しに1人の男と目が合う。 金髪にサングラス、190cmはあろうかという程の背丈、服越しでも分かる位の鍛えられた肉体、どう見ても化学者じゃあない。 予想外のことに、え…?と硬直する少年。 ふと、男の後ろに目を向ける。 そこには、自分の予想をさらに越えるものがあった。 研究員達が皆、血まみれで床に倒れていた。恐らく、先程まで実験に参加していた研究員達全員が。 この光景に、少年はもう疑問を浮かべることすら出来なかった。 立ちつくす少年に、目の前の男がスピーカー越しで声をかける。 「よぉ、25番。突然だが、このガラスから離れてくれ」 「?」 「いいからさっさと離れろ」 男がガラスに何かを取り付ける。どうやらこのガラスに穴を空けるらしい。 男がその場から離れる。それを見てフラフラとしながら少年もガラスから離れる。 互いが安全地点に入ったことを確認し、男はガラスに取り付けられた物体に指を向ける。 直後、耳を突く様な爆発音が鳴り響き、ガラスの壁が破片となって床に落ちていく。
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