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目を覚ますと、見覚えの無い女子が自分の顔をのぞき込んでいた。
「ワッ」
反射的に起き上がろうとしたが、少年の体は動いてはくれなかった。
「やぁオハヨウ!」
「お、おはよう・・・」
「アハハ!きょとんとしてる!可愛いね君!」
「? ? ?」
自分の今置かれている現状がいまいち把握出来ない。
意識が無くなる前、研究所に入った侵入者が自分に何かを飲ませた事は覚えている。しかし今自分がいるここは研究所ではない。
誘拐されたのか、じゃあ目の前のこの人は?
「あ、あの・・」
「ここは私達の拠点の1つで君を誘拐してきたのはうちのボスで私の名前は藤永春(フジナガ ハル)だよ?」
「あ、そ、そう・・・ですか」
「うん!あ!君、名前はあるの?研究所には『25番』としか登録されてなかったけど」
「名前は・・・無い、です」
「ふーん、そうなんだ。でも25番とかじゃなんか寂しいからなー・・・うん!じゃあ『ニコ』君って呼ぶね!」
「は、はい」
少年はこの状況に少し困惑していた。研究所にはここまで感情を出して話す者はなく、こんなにも親しげに話しかけてくる者もいなかった。当然、少年に目の前のこの女子に対する正しい接し方なんて分からない。
コンコン
その音で2人の会話が一旦切られる。
部屋に入って来たのは少年を誘拐したあの爆弾男だった。
「春、俺そいつに今から話するからちょっと外出てて」
「はーい」
藤永は言われた通りに部屋を出ていき、部屋には少年と誘拐犯の2人だけとなった。
少年はいつでも能力を使える様構えていた。だが、男はある程度の距離を保ったまま、そこから少年には近づかなかった。
「君の能力は知っているぞ少年。だからこれ以上君には近づかない」
少年の能力は『自分の存在を視認不可にする』、この数十年の間で確認されている超能力の中でもかなりの高位の能力である。しかし・・・
「ま、どんなに凄い能力でも効果範囲が半径1mじゃあ、そりゃ劣化型って判定されるわな」
そう、少年の能力は周りの風景に擬態して見えなくなる訳ではない。人が視覚によって得る情報に誤情報を流し、自身を視認させなくするのだ。
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