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本当は去年の様に、一番前で先生の生の声と素敵なお顔を拝見したい。
しかし今年は勝手に聴講しているだけ。
必修科目だけに瑠夏は、真ん中辺りの端の席で1年生に紛れていた。
「……ですから、カントが言う批判とは……」
去年と変わらない藤乃川先生の声。
瑠夏は、先生の語る言葉も声も全て好きだ。
人によっては子守唄に変化する先生の声も瑠夏にとっては、甘美な囁きだった。
語るのが、デカルトであっても、ルソーであっても、先生の語り口は変わらない。
全ての哲学者に対して、いつも敬意を持っている。
そんな藤乃川先生を瑠夏は尊敬していた。
見詰めるだけの日々は、1年半以上が過ぎていた。
瑠夏は一途に藤乃川先生をずっと想い続けている。
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