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「ねぇ、川本くんは通知票どうだった?」
綾咲さんは俺から視線を外し、俺の後ろへと目を向ける。
「…」
「川本くん?」
綾咲さんにつられて後ろを見ると、いけすかないイケメンが一点を見つめがらぼーっとしていた。
コイツ、綾咲さんの呼び掛けに気づいていないようだ。
なんという奴。
「川本くんってば!」
3度目の正直の言うべきだろうか。
綾咲さんの大きな声で、どこか違う世界に行っていたコイツは弾かれたようにこちらの世界に戻ってきた。
こっちに目を向け、「なに?」と短く答える。
あまり機嫌が良さそうではない。
「通知票、どうだったのか聞きたくて…」
なんだか急にしおらしくなった綾咲さん。
それもそうだろう、なんかコイツ冷たいし。
「あぁ…別に普通だったよ。可もなく不可もなく」
「そうなんだ…少し見せてもらってもいい?」
綾咲さんが遠慮がちに聞くと、川本はなにも言わず通知票を差し出した。
「ありがと」
綾咲さんはまたまた遠慮がちにそれを受けとる。
それを確認すると、コイツ…川本健はまた窓側を一点に見つめる作業に入ってしまった。
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