サファイアの指輪

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 帰り道、再び自転車をキーコキーコこぎながら、背中の温もりにひとつ尋ねる。 「そういえば、おまえも青い指輪持ってたよな。首から下げてるの、それそうだろう?」  うん、とそれだけが返ってきた。 「お母さんの指輪なんだっけ?」 「……覚えてたの?」と少し意外そうな声。 「それなのに疑うなんて、俺ほんとに馬鹿だったよなあ」  こぎながら、前を向いたまま言う。  しばらくの間、キーコキーコと聞こえるだけの、でも悪くはない沈黙が続いた後に、背中の彼女は「ねえ」と切り出した。 「もしかして、年上好き?」 「え?」  年上……?  とっさに今までの色んな光景が浮かぶ。パンを持って振り返る姿とか、俺と目が合ってにっこりえくぼを作って笑う顔とか……。 「え、あの子、俺より年上?」  キキーッとブレーキをかけると、同時に後ろからくすくす笑い声が聞こえてきた。 「もう!」と彼女。 「あんたときたら、今更そんなこと! 偉そうなこと言って、全然あの子のことわかってないじゃない」 「だって、おまえだって、『あの子』って」  そうだ、あの人が俺より年上なら、こいつよりははるかに年上ってことになるじゃないか。 「まあ確かにそうだけどね。だって、私よりも背が低くてかわいらしいし、すっごく気さくな人だし、なんだか年上って感じが全然しなかったから――でも、それにしたって、まったく、もう!」
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