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「勇者様~」
ダイルが地図に集中していると、愛らしい声が勇者を呼んでいる。
その声に気づいたダイルは声の方へと振り返る。
そこには7~8歳ぐらいの少女が手を振りながら、ダイルの元へと歩み寄っている。
黒のローブと魔女専用の三角帽子が特徴的な少女。
素直な子であり、人形みたいに可愛い容姿が少女の魔女っ娘としての魅力を底上げしている。
彼女の名は〈マナ〉
ダイルと共に魔王討伐を果たした六英雄の一人である。
六英雄とは勇者の従者として、魔王討伐に参加した六人の英雄の事である。
その六英雄の一人にマナが含まれている。
実際のところ、彼女の魔法は年相応と言っても良いほど未熟なものだ。
しかし、そんな未熟な魔女っ娘が六英雄になれたのは、ある分野に特化していたからだ。
その分野だけなら『千年の魔女を凌ぐ』と噂されるくらいの実力を持っている。
そんな彼女が得意とする魔法から付いたあだ名が〈天災の天才〉である。
魔女っ娘は少し呆れながら「勇者様、また道に迷ってたですか?」と、迷子になった勇者様の手を引っ張り歩き始める。
「マナ、どこ行くんだ?」
「勇者様をお城に連れて行くです」
「場所分かるのか? こんな広い町なのに、地図も見ないで」
「私は魔女なのですよ。 空間魔法の初級は修了済みなのです」
「つまり……どういう事だ?」
「空間魔法の初級は半径1km以上の地理を把握する魔法なのです。 私は半径5kmまでなら分かるのです」
「そういえば、そんな事を前にも言ってたな」
マナに手を引かれたがら、感心する方向音痴の勇者。
そんな勇者に、ほとほと呆れ果てる〈天災の天才〉であった。
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