ふたり

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「お前、勉強みてあげてたりするの?」 「見るには見るけど……。あの人飲み込み遅くて……僕が飽きる」 「ハハッ。こらこら、付き合ってあげなさいよ」 前から彼女が勉強しているところを見ることはあったけれど、ずっと就職する気でいた彼女のノートに勉強の成果はあまり出ていないみたいだった。 「落ちたらどうするの」 「どうしようか」 「ちょっと明人。それ、沙彩ちゃんの前で絶対に言っちゃ駄目よ。今後、私達の前で言っても怒るから」 「はいっ」 さっきから僕等の為にカニを剥いては、その身を皿に乗せてくれる美穂。 カニのハサミを持った女性を見て、恐ろしいと感じたのは初めてだな。 以前にも増してすっかり尻に敷かれている兄を、同情の目で見る。 「けどさ、俺達がどれだけ祈ったって、こればっかりは本人の力だからなぁ」 「まぁ、大丈夫でしょ。落ちたら僕が養えばいい」 「へぇ……。それ、野々原ちゃんに言ってあるのか?」 顔をニヨニヨさせる明人に、僕は無言で返事を返す。 「弟よ、無視はやめてくれー? 無視は」 「あのね……受かろうと必死に勉強してる人に落ちた時の話をしてどうするの」 「……あぁ。それもそうだ」 「フフ。ユッキーが結婚かぁ。んー、想像出来ないな」 僕だって、美穂が義姉になる日がくるとは思ってなかったよ。
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