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今日もまた一人、神さまが生まれた。
少年はちっぽけなキューブを大事そうに手のひらで包んでいた。
「こんにちは、初めまして。」
少しだけ緊張した面持ちで、少年は手のひらのキューブに囁きかけた。
キューブの中では男の子と女の子、何にもない四角い箱の中に小人のようなその二人は佇んでいた。
少年が初めて創った"世界"と、その"住人"だった。
創ったばかりの四角い箱庭は、世界と呼ぶにはまだあまりにも真っ白で稚拙で。
それでも少年は嬉しそうに微笑んだ。
『僕の創った世界の最初の人間』。ちまちまと狭い箱の中で動き回る男女の小人は、さながらアダムとイヴのようだと、ちっぽけな世界のちっぽけな創造主は笑った。
「ねえ、君達はどんな世界で生きてみたい? 剣と魔法のファンタジー? 謎解きサスペンス? 平和で愉快な学園ストーリー?」
箱の住人に問い掛けるも、応えはなかった。向こうからはこちらが見えていない、聞こえていないかのように相変わらず動き回っているだけだった。
そんな姿さえも少年は嬉しそうに見つめ、そっとキューブを撫でた。
「ごめんね。僕まだ君達がどんな性格で、どんな世界を生きるのか決めてあげられていないんだ。」
自分が生み出した二人の小人は、既に少年にとって子と呼べる程に愛しい存在となっていた。否、それは紛れもなく少年にとっての子であった。
じゃあ、まずは君達に名前を付けようか。
そんな少年の言葉にも小人達は気付かない。分からない。
それでも創造主の手の中に収まった四角い世界は、少しずつ色付き始めるのだった。
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