610人が本棚に入れています
本棚に追加
ただ、それが“この世界”の常識なのだ。
そして、“この世界”の研究者達が何かと優遇される理由でもある。
――――。
二人の間にしばし沈黙が流れる。
「――な?」
俺の皮肉めいた笑みに、
「あ~~確かに、現実味無いかもね」
西条は、「ははは」と乾いた笑みで頷いた。
「大体、何よ『進化』って。もう人類は完成されてるっうの。これ以上、私にどう完璧に成れって話よ」
“この世界”に対する批判なのか、自分の自慢なのか――俺には分からなかったが、相変わらずの自尊心に思わず笑いがこぼれた。
「――って、何笑ってんのよ、気持ち悪い」
彼女にジドっとした目で睨まれて、
「はは、悪い悪い」
苦笑しつつ、手や制服に付いたパンの粉を払って、立ち上がった。
「何よ、もう行くの?――時間、まだ結構あるわよ」
意外そうに、西条が言った。
――それこそ、俺にとっては意外だった。
「あぁ、もう飯は終わったからな。ココじゃ、皆の視線が気になってしょうがないしさ――」
もう一度、周囲を見る。
それにつられるように、西条も見渡すと、相変わらず視線を集めている事に気が付いた。
珍しく、「うっ」と怯んだ様子を見せた西条に俺は肩を竦(すく)ませながら、
「――知ってるか? お前が俺に変に絡んでくるから俺ら……『恋人同士』って噂されてるぞ」
ペットボトルに口を付けたのを確認して、ポソっと言った。
最初のコメントを投稿しよう!