第一章

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ただ、それが“この世界”の常識なのだ。 そして、“この世界”の研究者達が何かと優遇される理由でもある。 ――――。 二人の間にしばし沈黙が流れる。 「――な?」 俺の皮肉めいた笑みに、 「あ~~確かに、現実味無いかもね」 西条は、「ははは」と乾いた笑みで頷いた。 「大体、何よ『進化』って。もう人類は完成されてるっうの。これ以上、私にどう完璧に成れって話よ」 “この世界”に対する批判なのか、自分の自慢なのか――俺には分からなかったが、相変わらずの自尊心に思わず笑いがこぼれた。 「――って、何笑ってんのよ、気持ち悪い」 彼女にジドっとした目で睨まれて、 「はは、悪い悪い」 苦笑しつつ、手や制服に付いたパンの粉を払って、立ち上がった。 「何よ、もう行くの?――時間、まだ結構あるわよ」 意外そうに、西条が言った。 ――それこそ、俺にとっては意外だった。 「あぁ、もう飯は終わったからな。ココじゃ、皆の視線が気になってしょうがないしさ――」 もう一度、周囲を見る。 それにつられるように、西条も見渡すと、相変わらず視線を集めている事に気が付いた。 珍しく、「うっ」と怯んだ様子を見せた西条に俺は肩を竦(すく)ませながら、 「――知ってるか? お前が俺に変に絡んでくるから俺ら……『恋人同士』って噂されてるぞ」 ペットボトルに口を付けたのを確認して、ポソっと言った。
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