第一章

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◇ 俺こと頼家 悠(よりいえ ゆう)の通う高校では、丁度一週間後に卒業式がある。 それでも、この日常に何一つ変化は無い。 何の変哲も無い日の昼休み。 何の変哲も無い学校の屋上で、 何の変哲も無い昼食をとっている 何の変哲も無い高校二年生。 少し長めの黒い髪。 多少中性的なまぁまぁな顔立ち(家族談)を台無しにする、常に不機嫌そうな、やる気の無い黒い眼。 あまり筋肉質では無いものの高めの身長おかげで、BMI(肥満度)は平均。 ――それが、俺。 食事といっても、粗末なもので、登校途中で購入した、パンとカップ飲料。 やろうと思えば、朝、弁当でも用意して、もう少しまともな昼食にすることも出来るのだが、それはしない。 料理自体は嫌いではないが、俺はなるべく睡眠時間を大切にしたい人間だったりする。 両親は既に他界し親代わりの7つ上の姉は仕事の関係で寮に住み、家には滅多に帰ってこない。 二つ下の妹も居るが、家事全般が壊滅的。 故に、もろもろ、俺がやるしかない。 妹の弁当を作る必要があるのならついでに自分のも用意するが、彼女はまだ中学生。 学校給食という便利なシステムのおかげで、その必要が無い。 自分の事はなるべく省く。 ――家庭を預かる高校生の知恵だ。
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