610人が本棚に入れています
本棚に追加
「まぁ、アイツが高校に入ったら、作らなきゃだけど……」
柵に背を預けながら座り、気だるげに、ストローで、カフェラテを啜(すす)る。
見上げた空は、溜息が出る程、代わり映えが無い。
こうやって見ると、今自分が居る、この世界が“外の世界”から『未来都市』と呼ばれる“中の世界”だ、と言われてもピンとこない。
「……はぁ~~っ」
俺はストローから口を離し、おっさんみたいな溜息をこぼした。
「――なんと、いうか……」
覇気の無い瞳を細めて、雲を追う。
そして、もう一度、溜息を吐き出す。
すると――。
「ホント、相変わらず鬱陶しいわね。その溜息、何とかならないかしら?」
そんな、ややトゲのある少女の声と共に、急に、影に覆われた。
座っている俺に、誰かが、上から、覗き込んだらしい。
逆光で、その少女の顔ははっきり見えないが、特徴のある声は聞き間違えない。
――と、いう以前に、俺に話しかける友人は、悲しいかな居ない。
以前、“ちょっとした事”をやらかしてしまって以来、何かと、頼家 悠は浮いているのだ。
故に、その人影の正体は、ただ一人しか該当しない。
最初のコメントを投稿しよう!