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「なんだよ、西条(サイジョウ)。何か用?」
「アンタになんか用なんて無いわよ、馬鹿」
と、言いつつ西条 玲奈(さいじょう れいな)は、俺の隣に座った。
腰まで伸びた夕陽の様な鮮やかで、ボリュームのあるオレンジ色の髪を、後頭部で一房だけ結んでいる。
両際に首元程度まで垂らした髪に隠れてはいるが、彼女の顔は、とても小さい。
目尻が吊りあがった、気の強そうな焦げ茶の瞳。
小ぶりでスッとした鼻筋、薄いピンク色をした唇。
背は平均よりやや高い位で、スタイルは悠と同級生だが、メリハリが良く、女性的な特徴は制服越しでも目に見えてとれた。
携えている学校指定の赤いバックでさえも、ちょっとしたお洒落アイテムになっている気がした。
俺も一応は、健全な一男子生徒。
彼女の胸元やスラリと伸び、適度に締まった長い脚に視線が行ってしまう。
だが、そんな自分に罪悪感を感じて、視線を逸らした。
「――じゃなんで隣に来るんだよ」
「う、うるさい、馬鹿!」
西条はプイ、と、そっぽを向いてしまったが、チラリと視線だけ俺に戻して、
「私が、折角、相手してあげてるんだから、感謝しなさいよ感謝」
と、唇を尖らせながら、毒を吐く。
「はぁ~い。あざぁ~っす。ベタな感じで、何よりです」
やれやれ、という様に言うと、「ぶっ!?」と、西条は吹き出した。
それから、より瞳を吊り上げて、
「ベタって何よ!? ベタって!! 一緒にご飯食べる友達も居ないくせして!」
頬を赤くさせながら、周囲の視線も気にせずに叫んだ。
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