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「あれ、赤バッジ。一年坊主だね」
真っ黒のくりくりした瞳に、ウェーブがかった黒髪。
後光がさしているかのように、その人の存在が眩しく見える。
気のせいか、幻覚なのか。
バサッと音がして、彼女の後ろで、白銀の翼が揺れた。
空からの階段を降りてきた、まさしく天使だ。
合服のセーラー服の背中に、本物の羽があるんじゃないか。
俺は本気でそう思って、思わず名も知らぬ彼女の背中に手を伸ばした。
「ちょっと、何だ?」
「あ、ごめんなさい」
「じゃあ何、背中に何かついていたか?」
「と、思ったんですけど、何もなかった。です。ほんとにごめんなさい、それじゃあ」
俺は走り出した。
頬がりんごみたいに赤くなっているのがわかる。
どきどきと心臓がうるさい。
「天使だ……」
俺はうわ言のように呟いた。
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