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私の中のモンスター
「はぁー‥」
「結子、ウザイ」
友人に何度目かのため息を指摘される。
「好きでため息ついてるんじゃないもーん」
ちらり、と横目で友人を見やり呟いた。
「そんなに嫌ならはっきり言ってやったら?」
友人は呆れ顔で私に提案する。
私は曖昧に笑い、また元の位置に視線を戻す。
視線の先には、彼氏である翔平の姿がある。
‥女の子と楽しそうに喋っている、自分の彼氏。
私の彼氏はカッコいい。そして無自覚の天然ボーイ。
そんな彼に猛アタックをして、やっと付き合えるようになったのだ。
自分から幸せを壊すようなことはしたくない。
‥だけど。
ベタベタ触りすぎ、
ニコニコしすぎ、
あの、天然タラシめ。
勝手にイライラしているのは私なのに、彼のせいにして気を紛らわす。
自分の感情に嫌気がさす。
ふと、目の前が暗くなったかと思うといきなりおでこにでこぴんをくらった。
「‥いたい」
「や、眉間にシワがさ。結子の可愛い顔が台無しだろ」
目の前には、彼がいて。こんな臭い台詞を吐いても似合うところが憎らしい。
そしてそれと同時に私のところに来てくれたことが嬉しくてたまらない。
「うるさい、バカ」
ニコニコ笑う彼の顔を見て、私の中のモンスターがおとなしくなっていった。
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