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無言になった電話は暫くしてお互いに通話終了のボタンを押した。
ひとつ息をつく。
「……栗林!!今日のデートは中止にするわっ。レストランのキャンセルよろしくね!!?」
鏡を覗きながら叫ぶと暫くして男が扉を開けて部屋に入ってくる。
「どうしたんだ?いきなり」
「んー…今から、ふて寝するの」
鏡越しで拗ねた口調を見せつける。
「それにしては嬉しそうだけど?」
「それは外れね。あっそうだ明日、弟の所まで送ってくれる?」
「何かあったのかい?」
鏡から男へと視線を移す。
「あいつに負けないくらい美味しいケーキを届けなくちゃいけなくなったのよ」
そんな馬鹿な私を見て栗林は、やっぱり嬉しそうだ。なんて微笑んでくる。もう鏡なんて向けないけど私も微笑んでいるようなそんな気がした。
恐れていたことがこんなに気持ちを明るくさせてくれるとは。本当どこまでもムカつく男だわ。
-fin-
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