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そう言って髪を撫でるその手と甘い声に簡単に追い詰められる。逃げる気はしなかった。
「……馬鹿にしてる」
「してねぇよ。本当にどうしようもなく可愛いよ雪」
髪から頬にスルリと撫でる手が移動し、軽く触れてからそこに口付ける。
「……だ、騙されないし」
「そうか?まぁ、……愛してるから許せよな」
「っ……」
色付いた低い声が耳元で囁かれた。真っ赤なボクを見た灰はまた「愛してるよ」なんて言って唇を重ねてくる。これで灰の首に腕を回してしまう辺り、ボクは灰に相当溺れているのだろう。
「……大好きだもん」
笑顔を交わしたボク達はもう一度キスをお互いの唇に落とした。
甘い甘いこの空間は完全に1人の少年の存在を消していた。この後、血まみれの生徒が覚束ないスキップで古典資料室から出て来たことが、一部の生徒の間で騒がれたとか騒がれなかったとか……。
まだまだ2人の数多き噂は学園中に咲いている。
-fin-
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