梟が笑う

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あいつの死を思い出したら、怖くなった。 ビールを排水口に捨てる。 モヤモヤした、気持ちの悪いに感情に胸が締め付けられる。 どうして? どうして私は泣いているのだろう? 洗面所の棚から、睡眠薬と精神安定剤を取り、一緒に水で流し込む。 窓の外から聞こえる雨の音。 あいつの葬式を思い出したのも、この雨音のせいかもしれない。 その音をぼんやりと聞いているうちに、私はテーブルに座ったまま、眠りに落ちた。 暮れかかる空が真っ赤に染まる。風は少し肌寒い。秋が近付く証拠。 私は夜勤の準備をしながら、 「ご飯、机の上だから。ちゃんと食べて」 あの子は何も答えない。カーテンの隙間から、赤い空を見つめている。   !…… 私の体が硬直する。 頭からつま先まで、長い杭で打ちつけられたみたいに動かない。 眼球の奥の奥をぎゅっと掴まれた、そんな気持ちの悪い気分。 あの子が笑っている……   それは、笑顔と言うにはあまりにも不気味で、あまりにも不快で…… 私は逃げる様に部屋を飛び出した。 ここにいるのが怖かった。早く逃げたかった。一度も振り返らなかった。
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