梟が笑う

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夜の病院。 ナースステーションで、電子カルテを入力する私。今夜はナースコールが少ないせいか、時間の経つのが遅い。 頭を空っぽにしようと努めたが結局、無理だった。 あの笑顔を思い出す。 あの子の……骸の笑顔……笑顔というよりも……悪意の固まり。 前に、笑うあの子を見た事がある。 あれは1年前。 あの子の同級生2人が、川で溺死した日。 その日は小学校の林間学校で、学校近くの山でキャンプが行われた。 夕方、2人の男子生徒が行方不明になった。 周囲はパニックになり、警察や消防の捜索が行われたが、2人は見つからなかった。 子供達は家に帰され、自宅待機となった。あの子も同様だった。 帰ってきたあの子は、笑っていた。 台所で洗い物をしている時、ある事が気になった。 眠っているあの子を確認し、あの子の靴に触れる。 濡れている…… あの子の靴は濡れていた。胸騒ぎがする。黒い妄想が頭の中に広がる。 行方不明の2人の少年は、もしかしてあの子が……私は必死にその妄想を掻き消した。 ガシャっ…… 私の背後で音がする。恐る恐る振り返る。 額を鋭い何かで突き刺されたような戦慄が走る。 痛みを伴う恐怖に、思わず後退りした。
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