梟が笑う

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そこには、あの子が立っていた。 右手には包丁が握られている。 その視線は、狂気に満ちている。 私は両手で口を塞ぎ、必死に恐怖を閉じ込めた。 声を出せば殺される、そう思った。 あの子は包丁の先を私に向けたまま、ゆっくりと近付いてくる。 全身に電流が走る。心臓が飛び出しそうになる。 震えが止まらず、私はその場で嘔吐した。 あの子は黙って、そんな私を見ていた。 自分はもう死んでいるのではないか? この子に殺されているのではないか? そんな錯覚を覚え、涙が溢れた。
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