98人が本棚に入れています
本棚に追加
/177ページ
「土方さん、そろそろ失礼します。
土方さんも早く寝ないと体に悪いですよ」
総司は珍しく土方さんに労りの言葉をかける。
土方さんは驚いた顔をして、口許をひきつらせていた。
失礼な人だ。と思いながらも、総司は悪戯が成功したとでも言うような笑みを浮かべる。
総司は楽しそうに笑いながら、土方さんの部屋を後にした。
総司は静かな廊下を歩きながら考える。
血濡れた蓮と剣術の美しさと…最後に見せた笑顔。
女子の身でありながら、蓮が刀を握れる事は昔から知っていた。
その腕前がかなりなものだということもわかる。
しかし、血濡れた姿を見たのは初めてだった。
そして何故これほどの技術を持っているかはわからない。
長い付き合いである試衛館の皆も多分知らないのだろう。
彼女に聞いたら教えてくれるだろうか?
話して…くれるのだろうか。
君は一体…誰なんだろうか。
ふとそんなことが頭に浮かぶ。
蓮の事をよく知るために、断られる事を覚悟で聞いてみようか……
そう心に決めて、総司は廊下を進んだ。
.
最初のコメントを投稿しよう!