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蓮は総司の言葉に考える。
話したことは無かった気がした。私が殺し屋だということすら、教えていなかったかもしれない。
「もう、今さら隠すことなんてありませんよ。守るものなんてもう私にはありませんから……だから、全部教えます」
私はその場に座り込み、井戸を背もたれして総司を見上げた。
総司は少し困惑していて、悲しそうに微笑むと私の隣に腰を降ろす。
私の答えは総司にとって、予想外のものだったらしい。
「何処から話せばいいのかわからないので、とりあえず全てお話します。
そのなかで分からない事があったら聞いてください」
私は月を見上げる。
眩しさに目を細めながら、月へと手を伸ばす。
色白い手が月に重なって見えた。
そのまま握りしめた手のひらが、月を掴むことはない。
私は記憶に残る限りの、幼い頃の記憶を思い起こすと、静かに語り始めた。
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