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そして私の記憶は15年前へと遡る。
───15年前、当時3才
「ほら、蓮これを持って、構えはこう」
幼い少女に小太刀を握らせる。
鞘に収められた小太刀は抜いたときよりも更に重く、幼い子供に持てるものではない。
「そう、蓮は覚えが早くて天才だ」
しかし、持ち方がどうであれ、一族の者は皆天才だと幼子を褒めた。
毎日小太刀を持たせ、そして褒めるというその繰り返しに、やがてその幼子は小太刀を持てば褒められるという事を理解する。
「いい子ね」
「偉いぞ」
「流石だ」
そうやって褒められると、とても可愛らしい笑顔で幼子は笑った。
小太刀を手に笑う幼い女の子は、それが人を殺す道具である事をまだ知らない。
ただ握るだけの、ほんの可愛いお遊びの様なものだった。
───
「不思議ですよね、子供はどんなことでも褒められると喜ぶなんて。
その意味すら理解していないのに」
私は自分の手のひらを見つめて嘲笑する。
総司は何も言わない。
ただ黙って私の言葉に耳を傾けていた。
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