君が手を伸ばした先に

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── 「今日で遂に四つだね そろそろ剣術の稽古を始めようか」 そう言って四歳になった蓮へと剥き出しの短刀を渡す。 蓮は不思議そうに首を傾げていた。 「今日は初めてだから小太刀ではなくこれを使うんだよ。小太刀は明日からだ。 それで斬りかかっておいで」 「わかりました」 屈託なく笑う蓮に誰も罪悪感は抱かない。何故ならそれが古くからの因習だったから。 稽古は厳しく行われた。今まで何をしても褒めていた大人たちが、今度は少しでも失敗をすれば怒鳴るようになった。 そして蓮が泣きわめけば今度は殴られた。 それでも蓮は稽古をやめられなかった。 小太刀を手にすれば褒められると体が覚えているのだ。 怒鳴られるのが怖くて、少しでも褒めてほしくて小太刀を握る。 知らず知らずに感情まで作り替えられていることに、幼い少女が気づくはずもなかった。 幼い子供の心理を利用したなんとも汚い方法で、大人たちはどんどん蓮を作り替えていったのだった。 ─── .
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