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今まで、人を殺す事に疑問すら持つことなく、持つことさえ許されずに育てられた私にもやがて終わりはやって来る。
その小さな出来事は、やがて幼い蓮にとっては大きな波紋として、亀裂として襲い掛かって来るのだった。
もうすぐ歳が六つになる頃、蓮は何時もの様に人を殺して村へと帰った。
その自分が暮らす村で、蓮は一人の少年と出会う。
出会ったのはほんの一瞬だった。
血塗れの蓮の姿を見て“化け物”そう言って少年は走り去って行った。
「ねえ、父様……私は化け物なのですか」
幼い蓮は同じ殺し屋である父親に疑問を投げ掛けた。
父はこの村の頭領だった。
優しくて、強くて立派な父を蓮は誇りに思っていた。
そんな父なら正しい答えを、教えてくれるのではないかと思った。
「いいかい、蓮よく聞くんだ。
悪いのは蓮じゃない…蓮じゃないんだ。
周りの大人たちが、この因習がいけないんだ。
だけどこれだけは忘れないで……
蓮が殺した誰かにも、愛する人や愛してくれる人がいた。守るべき誇りがあった。大切なものがあった。
人を殺すということは、その人の全てを奪う事なんだ。
いいか、蓮。命は重いんだ。その命を奪って俺達は生活している。父さんは自分のこの一族を誇りに思っているが、蓮…人を殺すことを誇りには思うな。
お前には、優しい子にそだってほしいよ」
優しい瞳で父様はそう言った。
だけと難しい言葉は、全てを理解できなかった。
「父様も、私を否定するのですか?」
父様は少しだけ悲しそうに微笑む。優しく、だけども悲しそうな瞳が印象的だった。
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