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少しずつ、私は村に居づらくなった。
あんなにも天才だと囃し立て、私に殺し屋として生きる事を教えた大人たちも私を脅威だと感じるようになった。
「汚らわしい子」
「恐ろしい、要らない子」
周囲に浴びせられる言葉は、幼い私には理解できなかった。
それでもその言葉がいい意味を示さない言葉だということだけは解った。
どんなに化け物と言われても、私は殺しを止められなかった。
どんなに頑張ろうと、私が褒めてもらう術はこれしか知らないのだ。
真っ赤な血に染まる姿が本当は醜いものだと気づいていた。
それでも蓮には美しく見える。真っ赤な血が綺麗だと教え込まれていたから。
「おかえり、蓮」
鈴璃はそう言って私を抱き締める。
「鈴璃、汚れてしまうわ……私は汚いの」
「いいえ、蓮は汚くなんてないのよ」
血で真っ赤に染まった、真っ白な着物を着
た私を躊躇いもなく抱き締めてくれる鈴璃の腕が、とても暖かかった。
「駄目だよ…」
鈴璃は頭が良かった。
いずれはこの村の文官そして、政などを取りまとめる者として期待されていた。
幼いながらに、鈴璃が周りから好かれていることを理解していた私は、鈴璃が周りから嫌われる事を恐れた。
だけど鈴璃はいつも私の側に居てくれた。
側にいて笑ってくれた。
鈴璃のその笑顔が大好きだった。
だから私は少しでも自分が綺麗に、鈴璃と居ても恥ずかしくないように、血が目立たない紅い着物だけを身につけた。
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