追い求める影

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「そう、そうやって逃げ回ってよ」 雨音に紛れて、しかし何故稔麿はこんなにも通る声をしているのだろうか。 敵に背を向け、逃げてばかりの私は愚かだ…… 鈴璃はこんな私を見たら何て言うだろうか。 きっとよく頑張ったねって笑うんだ…… そして、風邪引くよって心配そうな顔して怒るんだろうな…… 「どうして、稔麿は…」 鈴璃を殺したのですか そう言おうとして、私は言葉を飲み込んだ。 そう問いかけて、私はどんな答えが欲しかったのだろうか? どんな理由があっても、私は許すことが出来る筈がないのに。 どう返ってこようと、ただ悲しみを突きつけられるだけなのだ。 「私は立派な殺し屋の筈なのに、人の死に悲しむなんて……一族の恥だな」 ──いいか、蓮。命は重いんだ。その命を奪って俺達は生活している。父さんは自分のこの一族を誇りに思っているが、蓮…人を殺すことを誇りには思うな。 不意に、亡き父の言葉が頭を過った。 幼い頃に聞いた父の言葉は私には理解できないものだった。 私の生きる道を否定する、悲しい言葉…… 「でも、今なら少しだけ貴方の言葉が理解出来るんです」 稔麿は人を殺すことを誇りに思っているのですか? 涙で歪む視界の中、私は必死に走り続けた。 .
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