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総司は意識を失った蓮に羽織をかけると、蓮を抱き抱えて屯所への道を急いだ。
抱き上げた体が、酷く冷たい。
どうしてこんな事になってしまったのだろうか。
あの男には何となく見覚えがあった。
そんな見覚えのある男と、何故蓮が知り合いだったのか。
問い質したい事は沢山あった。
「蓮の泣いた顔を見るのはこれで二度目でしょうか。
貴女のその涙の理由を聞き出して、私は……」
どうするのだろうか……
「困りましたね…蓮はその小さな体に、一体何を背負っているのですか」
一つ溜め息を吐いて蓮にそう問いを投げ掛ける。
気を失った蒼白い顔からは小さな吐息が聞こえるだけで、問いの答えが返ってくるはずがなかった。
それでも総司は問いを投げ掛けた。
「貴女はいつも嘘ばかり……貴女の嘘は悲しいんですよ。貴女は嘘を吐くとき、少しだけ悲しそうな顔をする。嘘だと気づいても何も言えない私は、貴女の嘘が悲しいんです」
起きている貴女に、私は何も言えないから…だからせめて今は私のつまらない話に付き合ってください。
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