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屯所へ帰り着き蓮を寝かしつけると、総司は土方さんの部屋へと向かった。
「失礼します、土方さん」
「総司か、入れ」
土方さんに言われるまま部屋へと足を入れると、そこには藤堂平助の姿があった。
平助の隣に静かに腰を下ろすと、総司は土方さんへと向き直る。
「あれはどういう状況か説明しろ」
突然の質問に、それでも言葉を理解する。
しかし、問われているのは最早自分ではない。重苦しい空気の中、平助が口を開いた。
「俺にも、よく分かりません。
急に追われたんです……訳も分からないまま走れと言われました」
「誰に追われていたんだ」
厳しい土方さんの声に、平助は少し自信なさげに答えた。
「…俺には分かりません」
「思い出しました、あの男は吉田稔麿です」
平助の代わりに答えた言葉を最後に、部屋に沈黙が訪れた。戸惑う平助を無視して、土方さんは冷静にもう一度聞き返す。
「待て、総司。今何と言った?」
「吉田稔麿です」
「何故あいつと吉田が繋がってやがる」
「分かりません。でも確かにあの男は蓮を狙っていました…」
「そうか…総司、他に何か知っていることはあるか」
総司は何も答えなかった。
これといって収穫がないと見たのか、やがて土方さんは話を切り上げる。
以上だと言った言葉に立ち上がろうとすると、土方さんから声がかかった。
「総司は少し残ってくれ、頼みたいことがある」
「仕方ないですね、土方さんは」
立ち上がって部屋を出ていく平助を横目に、再びその場に座り直した。
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