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足音が遠ざかっていくのを確認すると、土方さんは口を開いた。
「総司はどう思うか」
「どうって、どういう意味ですか」
「蓮が間者であるかと言うことだ」
土方さんは小さく声を落とした。
確かに誰にも聞かれたくはない内容だ。
「有り得ないと思いますよ……
私が蓮を見つけたとき、ありがとうと言って泣いたんです。とても安心したように泣いていました……あの涙にきっと嘘はありません」
「そうか」
同じように声を潜めて答えた言葉に、土方さんは短く返事をしたまま黙ってしまう。
「忙しいのは結構ですが、あまり考え過ぎると禿げてしまいますよ」
「お前はいつも一言多いんだ」
「私は別に土方さんが禿げてしまっても興味ないのでいいですけどね」
そう言って立ち上がった。こんな状態で、話す話もないだろう。
「総司、暫くいいと言うまで蓮を見張っていろ」
「仕方ないですね…」
その言葉に一言返してから今度こそ土方さんの部屋を後にした。
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