すれ違う指先

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総司は土方さんの部屋を後にして、そのまま蓮の部屋へと向かった。 「失礼しますね」 声をかけても返事が返ってくる事はなく、総司は気にせず部屋へと入った。 眠っている蓮を心配するように、左武郎が蓮に寄り添っている。 その光景に、総司は少しだけ笑みをもらした。 「左武郎さん、貴女も心配しているのですか」 総司は左武郎に声をかけながら、蓮の側へと歩み寄るとその場に腰を下ろした。 「左武郎さん……もし、蓮が間者だったら私は蓮を斬るのでしょう。 それが近藤さんの為になるなら、私は迷わずに蓮を斬ります…… でも、私は願っているのです。蓮が間者でないことを、蓮を斬らなくてもいい道を探しているのです」 私は貴女と出会って弱くなりました。 貴女を監視することを、申し訳ないと…悲しいと思っているのです。 眠る蓮の頭をそっと撫でながら、総司は胸の苦しさに悲しそうな笑みをこぼす。 左武郎が不思議そうに首をかしげてぴーぴーと鳴いていた。 .
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