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『会いたかったわ蓮』
私は真っ白な霧に包まれていた。
何処を見渡しても一面真っ白で何も見えない。
だけど懐かしい声だけははっきりと聞こえた。
『ねぇ蓮…私は貴女を守れて幸せよ……』
次第に霧は晴れていき、目の前によく見知った顔が現れる。
私の大好きな、優しく笑った鈴璃の顔。
『蓮、幸せに生きて』
言葉を返したくても、私の口からは何故か言葉は出ない。
切り離されたような世界に、ただ鈴璃だけが喋り続ける。
『蓮、貴女を愛していたわ』
私も愛していると言いたいのに、伝えられない事が悲しかった。
『ねぇ蓮……』
これまで優しかった鈴璃の表情が、段々と歪んでいく。
『ねぇ……』
『蓮……』
『私は、貴女を……』
『貴女を絶対に許さない……』
鈴璃がそう言葉を吐いた瞬間、鈴璃の体は血で真っ赤に染まっていた。
私の手に、生暖かいものが伝い落ちて来る。
手元に目を向けると、私は刀で鈴璃を貫いていた。
辺りが一瞬にして暗転した。
真っ暗な闇の中、私の手元を離れた刀がからんと音をたてていた。
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