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蓮が目を覚ましたのは次の日の夕刻、西の空にお日さまが沈む時刻だった。
ゆっくりと目を開くと、自分が僅かに泣いていたことが分かる。
「夢を見て泣くなんて…私はそんなに弱かっただろうか」
体を起こして自分の手を見つめた。
さっきまでこの手は真っ赤に染まっていた。
自分の手が血に染まる事なんて、もう何度も見ていた筈だったのに……
こんなにも心を揺さぶられるものなのだろうか。
『許さない』不意に鈴璃が言った言葉を思い出して、その言葉を押しきるように頭を振った。
「こんなものは……偽物だ」
「んぅ……」
私の呟きに反応したのだろうか。
突然聞こえた声の方向に首を向けた。そこには壁に背中を預けて眠っている総司の姿がある。
私は立ち上がり、まだ眠る総司に布団を掛けると庭へと向かった。
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