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「私はどれくらい眠っていたのかな……
左武郎のごはん、早く用意してあげないとお腹がすいて死んでしまうね」
私はいつものように木の根元を掘り返す。
久しぶりに見た虫が、ただ気持ち悪くて仕方がなかった。
吐きそうになるのを必死に堪えて虫を文の上へと乗せる。
「そんなに久しぶりでもないのかな……」
こんなもんかと立ち上がり、左武郎に虫を食べさせる。
美味しそうに食べる左武郎の体内に、どんどん虫が消えていく。
「今日はね、体の調子が良くないの……
だからね、左武郎のごはんが気持ち悪くて仕方ないの。
でも、私は左武郎を育てるって決めたから大切にするよ。
だから……左武郎、居なくなったりしないでね。
もう、私を一人にしないで……
置いて行かれるのはもう十分だから」
誰にも伝えられない思いを言葉に、左武郎にすがった。
さっきの夢がまだ尾を引いているのだろうか?
それとも稔麿に出会った事が原因なのだろうか。
鈴璃に似た人とぶつかった事だろうか……
「ねぇ左武郎。もう疲れてしまった。目が…覚めなければ良かったのに……」
両足を抱え、膝に額を押し付ける。
穏やかに流れる風が、今は少しだけ悲しかった。
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