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膝を抱えてどれくらいが経ったのだろうか。短かった気もするし、長かったような気もする。
ただ、今の自分にはとても長い時間が経ったような気がした。
急にふわりと、肩に何かを掛けられる。
優しい匂いに包まれながら、これが総司の羽織であることに気づいた。
「………」
何が言葉を掛けようとして開いた口を、私は何も言わずに閉じてしまった。
言いたいことは沢山あった。
だけどどう言葉にすればいいのか、私には分からなかった。
「蓮、起きていらっしゃいますか」
小さな音や気配で、総司が隣に座るのが分かる。
総司はそのまま私の肩を抱くと、自分の方へと引き寄せた。
「もうすぐ秋も半ばです、風邪を引いてしまいますよ」
「……ご迷惑を…おかけしました…」
必死に絞り出した声はとても小さくて頼りなかった。
本当はそんなことが言いたかったわけじゃないのに……
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