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「やっぱり起きていらした。
私は貴女に迷惑をかけられた覚えがありません」
そう言った総司に、私はゆっくりと顔を上げた。
夕日に赤く染まった空がとても美しく、とても眩しかった。
「今日の夕日はとても赤いのですね……
まるで血に染まったみたいに美しい」
夕日に染まる自分の手のひらに視線を落とし、そんなことを呟いてみる。
夕日に照らされた自分の手が、夢の中で見た自分の手のひらに重なって見えた。
そう思った瞬間、体がぶるりと震え出す。
鈴璃が……死んだ。
私が……殺した。
私が…刺し殺した。
「もうこの世に居ない鈴璃を……もう一度私は殺したのか」
小さく呟いて、私はようやく気づいた。
今初めて私は鈴璃の死を認めた気がした。
私はもう一度抱え込んだ膝に額を押し付けた。
泣いてしまわないようにぐっと唇を噛み締める。
総司は何も言わなかった。
ただ黙って私の側に寄り添っていた。
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