すれ違う指先

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「蓮、良かったのですか」 土方さんの部屋を出て、私は総司にそう言われた。 今夜はやけに月が美しく、妙に明るい夜だった。 少し冷え込んで、その寒さが一層月を美しく輝かせる。 明るい夜は何故だか落ち着かない。 「此れから辻斬りの始末に行くことがですか?」 月明かりに照らされた総司の顔が少しだけ悲しみに歪んだ。 だけど私にはその悲しみが理解できない。 月明かりに指した影がそう思わせているだけなのだろうか? 「貴女が人を殺すことです。 かつて仲間だった方たちを斬るのは心苦しいのではと」 そうか、と思う。かつては私にとっては仲間だったのか…… 「ねぇ総司……総司は初めて人を斬ったときの事を覚えていますか?」 私は聞いてみたくなった。 こんなにも優しいこの人が初めて人を斬ったとき、どのように感じたのだろうか? 人の思いなんて多種多様だ。 その感情が私にも理解できるものなのか、私は何故だか知りたかった。 .
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