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京の町を総司と二人で駆ける。
静まり返った町に二人分の乾いた土を蹴る音が響いた。
「蓮、動きづらくはないのですか?」
速すぎず、遅すぎない、決して息の切れない速さで走っていると、総司は不思議そうに聞いてきた。
喋っていては呼吸が乱れてしまうとそう思いつつ、私は総司の質問に答えた。
「これといって不便は無いですよ。
この服装が一番落ち着くんです」
総司が疑問に思うのも無理はない。
私がいま着ているものは普段と何一つ変わらない、紅く彩られた着物なのだ。
私が袴を身につけることは殆ど無い。
紅い着物に草履を履いた姿はどこをどう見ても町娘にしか見えないだろう。
ただそれに似つかわしくない高く結わえられた髪に、手に持った刀がなんだか奇怪染みていた。
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