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賑わいが無くなった真夜中の京の町で、乾いた足音が七つ聞こえてくる。
そのうちの五つの足音が私と総司の前で止まった。
「こんな真夜中に逢引かい旦那」
卑下た笑みを浮かべながら、五人の内の一人が総司に向かって口を開く。
腰に刀を挿してはいるが、腕がたつ様には見えなかった。
「他にどの様に映るんですか」
冷たく放たれた総司の言葉……それが何故だか印象的だった。
「へえ…それならお嬢ちゃん一緒に遊ぼうぜ…!」
語尾を荒げるよう口を開くと相手は刀を抜いた。
抜くと同時に、私は素早く相手に手を引かれた。
抱き締められた様な体勢に、全身に寒気が走った。
「蓮!」
「おっと、動くなよ旦那」
そう言って刀を私に突き付ける。
怖くもない脅しに私は顔を俯けて、口許に笑みを浮かべた。
「……っ!」
しかし、総司は息を呑む。
相手の力量は分かっている筈なのに、それでも私の身を案じているのか、総司は動かなかった。
「いいですよ。遊びましょうか。
そのかわり、楽しませてくださいね」
私は顔を上げ、媚びるようににこりと笑みをたずさえた。
「ぐぁっ─!」
目の前の男が奇声を発する。
男の体はぐらりと揺れると地面へと倒れた。
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