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「楽しませてくださいねと言ったじゃないですか…」
「…おいっ!小娘、お前今何をした!」
「よくも──!」
怒りに刀を抜いて構えたのが二人。
怯むように数歩後ずさったものが二人。
そして、胸を真っ赤に血で染めて倒れているものが一人。
急所を一突きという美しい太刀筋だった。
その様子から、誰が見ても手慣れていることがわかる。
「何って見てわかりませんか?
用心の為に短刀を仕込んでいたに決まっているじゃないですか」
そう言って私は短刀を振り払う。振り払った短刀に着いた血が辺りに飛び散った。
血塗れになった自分の手のひらが何だか不愉快だった。
「くそ…!この小娘が!!」
そう言って少し小柄の一人の男が斬りかかった。
怒りに任せて斬りかかってくる男を前に、私は静かに刀を抜く。
「蓮!」
総司が大声で名前を呼んだ。
「蓮…だと?」
総司の言葉に、相手は一瞬動きを止める。
その一瞬を逃す事なく、私は相手を切り伏せた。
「総司……お願いです。ここは手を出さないで頂けませんか」
少し冷めた口調で、私は静かな声でそう伝えた。
すると総司は優しく「わかりました」そう言って一歩下がったのだった。
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